「会社を探す」転職から、「自分に合う仕事と出会う」転職へ
膨大な求人を人が探し続けるのではなく、AIが双方の条件を整理し、本当に相性の良い相手との対話に集中できる転職・採用へ。

転職活動という言葉を聞いたとき、多くの人は「行きたい会社を探して応募する」という流れを思い浮かべるかもしれません。
もちろん、今でも「どうしてもこの会社で働きたい」という強い希望を持って転職する人はいます。
しかし私は、転職市場全体を見れば、こうした「会社名を先に決めて応募する」という転職のあり方は、以前ほど一般的ではなくなってきているのではないかと考えています。
その理由の一つは、私たちがアクセスできる求人情報が圧倒的に増えたことです。求人サイト、企業の採用ページ、転職エージェント、SNS、スカウトサービスなど、現在は膨大な数の求人情報が存在します。
選択肢が増えたこと自体は、求職者にとって良いことです。しかし、選択肢が多すぎることによって、新しい問題も生まれています。
「結局、自分にはどの仕事が一番合っているのか分からない」という問題です。
求職者が本当に探しているものは「会社名」なのか
転職を考える人が本当に求めているものは何でしょうか。
給与。仕事内容。勤務地。働き方。キャリアアップの可能性。自分の経験やスキルを活かせる環境。新しいことに挑戦できる機会。会社の文化。将来性。
もちろん人によって優先順位は違います。しかし、重要なのは、その多くが必ずしも「会社名」ではないということです。
例えば、自分が本当にやりたい仕事ができ、大きな裁量を持ち、自分の能力を十分に発揮できるのであれば、大企業ではなくベンチャー企業を選ぶ人も珍しくありません。「とにかく大きな会社に入れば安心」という価値観も、以前と比べれば変化してきています。
それなら、本来の転職活動は、「どの会社に入りたいか」から始める必要はないのではないでしょうか。
むしろ、「自分は何ができるのか」「これから何をしたいのか」「どのような条件で働きたいのか」を明確にし、その条件に最も合う企業や仕事を探す。こちらの方が自然ではないでしょうか。
しかし、人間がすべての求人を比較するのは難しい
ここで大きな問題があります。求人が多すぎるのです。
自分のスキルが活かせる会社を探そうとしても、数百、数千、場合によってはそれ以上の求人情報を一人の人間が詳細に比較することは現実的ではありません。
求人票を読み、給与を確認し、必要な経験を確認し、仕事内容を読み、会社について調べ、自分の経験と比較する。それを何十社、何百社と繰り返す。非常に大きな負担です。
そして、その結果として「本当は自分に非常に合っていた求人」を見つけられないまま転職活動を終えてしまう可能性もあります。これは求職者にとって大きな機会損失です。
もし、すべての人に「代理人」がいたら
私は時々、プロスポーツ選手の移籍について考えます。例えばメジャーリーガーには代理人がいます。
選手本人が世界中の球団を一つひとつ調べ、すべての条件を比較し、すべての球団と自分で交渉するわけではありません。代理人が選手の能力、市場価値、希望条件などを理解した上で、適切なチームを探し、条件交渉までサポートします。
もし一般の転職でも、同じようなことができたらどうでしょうか。
自分の経験、能力、スキル、希望する仕事、給与などを理解している「自分の代理人」がいて、膨大な求人の中から自分に合う仕事を探してくれる。企業から質問を受ければ、自分が過去に提供した情報をもとに対応してくれる。自分の市場価値や企業との適合度も客観的に分析してくれる。
そして最終的に本当に相性の良い企業との話に、自分自身が集中する。私は、AIによってこのような転職活動が現実的になってきたと考えています。
ZipUppが目指しているのは「応募の効率化」だけではない
ZipUppが目指しているものも、単に履歴書を簡単に作れるサービスではありません。
AIが候補者の経験、スキル、能力、希望条件などを理解する。一方で、企業側が求めている経験、能力、仕事内容、採用条件なども分析する。
そして双方の情報を比較することで、「この人と、この仕事は本当に合っているのか」を判断する。つまり、「有名な会社だから」「何となく条件が良さそうだから」というマッチングではなく、候補者と求人の中身そのものを比較するという考え方です。
AIは人間の採用判断を奪うために存在するのではありません。
AIが大量の情報を整理・比較し、人間が本当に判断すべき相手とのコミュニケーションに集中できる状態を作る。それが重要だと考えています。
実は企業側にも同じ問題がある
これは求職者だけの問題ではありません。企業側も、大量の応募者の履歴書を読み、候補者を比較し、インタビューを行い、その中から自社に合う人を探しています。
採用担当者の時間も有限です。100人の候補者と話すことが目的なのではありません。本来の目的は、「自社と本当に相性の良い人を見つけること」です。
もし100人の中から、AIによって双方の条件を比較し、特に適合度の高い候補者を見つけることができれば、企業はより有望な候補者とのコミュニケーションに時間を使えます。
これは単なる採用コスト削減ではありません。採用後のミスマッチを減らすことにもつながります。採用すること自体に成功しても、その人が会社や仕事に合わず、数か月後に退職してしまえば、企業にも本人にも大きな損失です。
採用は「企業が人を選ぶだけ」のものではない
これからの採用では、企業が候補者を評価するだけでは不十分だと思います。候補者も企業を評価しています。
企業には「この人は自社が求めている人材なのか」という条件があります。候補者には「この会社は自分が働きたい会社なのか」という条件があります。つまり、本来は双方向のマッチングです。
どちらか一方だけが満足しても、長期的には良い採用にはなりません。企業にとって良い人材であり、候補者にとっても良い会社である。その重なる部分を、できるだけ採用プロセスの早い段階で見つけることが重要です。
「たくさん応募する」から「合う会社と話す」へ
これまでの転職活動では、求人を探す。応募する。履歴書を送る。質問に答える。インタビューする。また別の会社でも同じことを繰り返す。という作業に、多くの時間が使われてきました。
しかし、AIが情報の整理、比較、再利用を担えるようになれば、人間が費やす時間の使い方も変わるはずです。
求職者は100社に応募することではなく、自分に本当に合う数社との対話に時間を使う。企業も100人を機械的に選別することではなく、本当に可能性のある候補者との対話に時間を使う。
AIが情報を整理し、人間は人間にしかできない判断をする。私は、これがこれからの採用・転職の一つの形になると考えています。
転職にも、すべての人に「AIエージェント」を
一部のトップアスリートや経営者だけが、自分の代理人を持つ時代ではなくなるかもしれません。
一人ひとりの求職者に、自分の経験や能力、希望を理解しているAIエージェントがいる。企業側にも、自社が本当に必要としている人材を理解するAIがいる。
そして双方のAIが膨大な情報を整理した上で、「この人と、この会社は話してみる価値がある」というところまで導く。
最後に話し、判断し、決断するのは人間です。AIはその前に存在する膨大な無駄を減らす。求職者にとっても企業にとっても、より少ない負担で、より良い出会いを作る。
「企業を探して応募する」という転職から、「自分に合う仕事と出会う」という転職へ。
ZipUppが目指しているのは、その新しい転職・採用の形です。